ちらっと見聞きした前評判では,単に,ある家族がみんな快楽的に万引きをする内容だと勝手に思っていた。ので,すぐに観るのを止めるかもしれないと思いながら見始めた。
それがあまりに単純な憶測だったという事は,見始めて少ししてから,作品に見入って最後まで鑑賞したことが証明した。
何という映画だろう。
見ごたえのある映画というわけでもない。泣ける映画,などという枠にも入れられない。
見始めて少ししてからか,私はあの”家族”の一員になるように引き寄せられていった。
いや,あの女の子が家族に引き入れられていく場面と同時にわたしの中の子供はあの家族の一員となったのだった。
私の中の現実とあの家族の現実には段差がなかった。
現実とは何だろう...この物語には,人と人とのつながりと,現在の社会構造との完全な剥離が鮮明に描かれていると感じる。
皆で分け合い,支え合い,足りないものを補い合い,心を分け合い,安らぎを手に入れ...
自らの至らなさを互いに埋め合い,許して受け入れ合う,円となる。
これを何と表現するのか。心の観点から言えばこれこそ家族というものである。少なくとも私にとってはそれが感想だ。
しがらみの家族ではない。血の繋がりも,体裁を保つための牽制のし合いもなく,そのままの各個人を受け入れ許し合う。
血で繋がった家族もいつかは離れ離れになる。
この,血で繋がっているわけではない心の繋がりの家族もそうだ。
完成した家族のようだった時期を過ぎ,またバラバラになる。
曼荼羅のように...。
出会っては別れる。この世界に誕生した時から,それを繰り返して人は生きてゆく。そして死んでゆくのだ。
最後の締めなど書く気はない。それは見栄えの良いだけのウソになるだろうから。
物事には,始まりと終わりがあるように見えるが,実はどうだろう。
繰り返して永遠となるのではないだろうか。その輪の中に私たちはいて,人々が出会い別れていくが,完結などあるのだろうか?
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